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「韓日戦争勃発!?〜韓国けったい本の世界」野平俊水+大北章二(文藝春秋)

◆がんばれミズノ先生

 チョー面白かった「韓国・反日小説の書き方」の著者、期待の新刊。今回は天理大学朝鮮学科の同窓生(著者紹介見るとそうなんだよね)との共著。著名入りの部分もあれば無記名の部分もあるところを見れば、相当マブダチなんだろう。基本的には前著の方針を踏襲したものだけど、前著ほど系統立てて李朝時代まで遡ったりはせずに、比較的最近出版された本を数多く紹介することに徹している。

 前著がとにかく面白く、いやあもっとたくさん反日本について教えてほしいなあと思っていたので、その点は満足。ただ抱腹絶倒度、皮肉度、ユーモア度はやや下がったかも。やはりと言うべきか、今回は文藝春秋からの出版ということで、ううむやはりこの人に目を付けたか、という感じ。

 韓国民間歴史家の書いた歴史本の誇大妄想ぶりを茶化しつつ、これが日帝時代の皇国史観と酷似していると指摘。「日本人にしたところで、過去にこうしたけったいな学説を正史として信じ、あまつさえ植民地下の朝鮮人に教え込んでいた」とチクリチクリ。

 こういうスタンスでいられる著者は、まさに新種日本人と言うべきか、と思っていたが、この本によると韓国でも昨今事情は大きく変わってきているらしい。

 「98年、韓国政府はそれまで公式に許可していなかった『けしからん日本文化(当地では『倭色文化』とバカにして呼びます)』の韓国流入を『日本大衆文化』と呼び直して許可してしまいました。この結果、日本アニメ・日本歌謡曲に飛びついて日本通を気取る若者が急増し、倉木麻衣・SMAP・GLAYに嬉々とする『日本大好き韓国青年』が増殖し、『日本への対抗心をメラメラと燃やす韓国青年』は絶滅一歩手前です」

 そうなると、それはそれでちょっとさびしい気がする。これはいわゆるグローバリゼーション(=アメリカ化)というやつで、私の実感としてもここ数年で急激に進んでいると思う。日本の若者がフヌケのようになってきたと言われて久しいが、韓国の若者も日本人とよく似てきたのである。それもここ数年で急激に。みんな何だかフワフワして、みんな何だか小ぎれいでとってもおしゃれ。多分これは韓国の急激なIT化とぴったり呼応している。外部の圧倒的な情報と触れると、みーんな朱に染まってしまうということか。

 私としてはコテコテの韓国人が「困った人たちだなあ」と思いつつもけっこう好きだったので(遠くで見ている分には)、そういう韓国人が絶滅寸前だとすると、これはさみしい。というか、世界中の人がみんな同じようになってしまう(しかもフヌケに)となると、これはユ○ヤ人の陰謀だ〜と叫びたくなってしまう。しかしだからといって「伝統的韓国文化の復権」を叫ぶとなると、まるで日本の新しい教科書を作りたい人たちみたいだし、難しい問題だなこりゃ。

 それはさておき、このあとで読んだ四方田犬彦の本で何と何とこの著者の野平俊水氏が登場したので驚いた。この本の著者紹介でも「本名の水野俊平で韓国初の日本人出演者として、バラエティなどテレビ番組に出演中」とあったので、何事?とは思っていた。「韓国人に批判的な日本人」みたいな悪者キャラでテレビに出てるのかなあと思いきや、かなり肯定的なキャラ「ミズノ先生」として大活躍しているらしい。大衆消費社会の定着した韓国において伝統的なモラルを説いて(一生懸命働くことだ大切だ、とか、職業に貴賤はない、とか)トリックスター的な人気を得ているらしい。日本人が韓国人に庶民モラルを説く?時代は変わったよなあ。

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