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花猫がゆく

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「ソウルの風景」四方田犬彦(岩波新書)

◆キザっちいのを除けば

 なんと野平俊水氏が登場したのにびっくりした。「ミズノ先生と呼ばれるその人物は、金大中が政権を取った直後、1998年にTV界に突然出現し、強い全羅南道訛りの韓国語を駆使して、たちまちのうちに評判になった。(略)『一生懸命に働くことが大切だ。うちのカミさんは美容師をやってる』とか『モノを節約して使おう。ゴミをやたらと捨てるのはいけない』といった庶民的なモラルを平明に説き、コミカルだが根は真面目といった話しぶりが好感を呼んだのである。それ以外にもミズノ先生はお料理番組で地方の名物料理に舌鼓を打ったり、無人島でロビンソンクルーソーの真似をしたり、さまざまな番組で活躍をしている」

 著者紹介でテレビで活躍と書いてはあったが、まさかこういう形での活躍とは思っていなかったので、本当にびっくり。嬉しい驚きといっていい。がんばってほしいなあ、ミズノ先生。

 しかしこの本、やっぱり面白い。文章があちこちキザっちいのが鼻につくし(巷とか邑に「まち」ってルビふるのやめて〜)、ひっかかるとこはあるけど、でもやっぱり面白い。慶州人と全羅人の対立の実情とか、金大中ノーベル賞受賞への韓国人の反応、映画や小説のいま、光州事件のその後、日本文化、従軍慰安婦についてまで、こう書くとありがちみたいだけど、それぞれが一般論に終わってなくて(ひっかかりつつも)面白い。

 思えば韓国現地人の在日韓国人に対する差別意識(のようなもの)について触れていたのは、私の読んだ中ではこの人だけだった。やっぱり観察力があると思う。

 どんなとこがひっかかるかというと、例えばこんなの。李浩哲という作家が柳美里を賛美しつつ、「あれは立派な朝鮮の女ですよ。日本の女はあそこまで自分を曝け出すことはできない。あれができるのは朝鮮の女だけです」と著者に語っている。柳美里という人は文学好きの団塊の世代の男にとてつもなくモテる人らしくて、それは国境を越えて韓国の男にも有効なのかと驚いた。一方で日本の作家では谷崎が一番いいと言う作家が柳美里についてはデレデレしてしまう。白けざるを得ない。

 同じ「朝鮮の女」から言わせてもらうと、柳美里は戦略的とまではいわなくとも、あざといという気がして気持ち悪くて好きじゃない。「曝け出す」といっても、不器用に突っ走るような「曝け出し」ではなくて、結局のところ団塊世代男が喜ぶ程度の、極めて上手な「曝け出し」でしかないと思うのだ。同じ「曝け出し」系なら「日本の女」の中島みゆきの方がずっといい。

 それに柳美里を「朝鮮の女」と言って喜ぶ心理には、在日を調子のいいときだけ自分たちと同じ「朝鮮人」だと主張する脳天気さがある。例えばこの私がいきなりすごく有名になったとして、韓国人から「いやあやっぱり朝鮮の女だねえ」とか言われたら、おいちょっと待て、と言うと思うのだ。在日はどこまでも、どこにも所属させてもらえなかった人種なんだぞ、今さら言うなという感じ。

 しかし韓国における村上春樹人気はいったい何? 著者によると村上春樹は、大衆消費社会を迎えた韓国の若者がはじめて「個人」になれるきっかけになったとのことだが、なんかなー。村上春樹に影響を受けた作家群を「ハルキ世代」と言うらしく、その一人の作家の「あゆ釣り通信」という小説はこんな話らしい。「ソウルに住む独身の写真家があるとき自宅でビリー・ホリディを聴いていると、『あゆ釣り通信』という謎の案内が舞い込み、謎めいた女が電話をかけてくる。それが縁となって彼はかつての恋人であったファッションモデルのことを思い出し、二人は再会する。彼女は写真家に向かって、あなたは自分が元いた場所にまで遡らなければいけないと謎めいた助言をする…」なんか頭痛いというか、あんまりいい影響とは思えないなあ。

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