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「病としての韓国ナショナリズム」伊東順子(洋泉社)

◆永住権がないとは

 言いにくいことだが、私が作っているウェブサイトで誰に遠慮することもないので言ってしまうと(文句を言うメールは来るかも知れないが)、私はあまり韓国に住みたいとは思わない。いくら在日といっても韓国についてすごく詳しいわけではないし、長期滞在したこともないので、韓国はこうだ!と決めつける気はさらさらない。ただ、今まで観察したり見聞きした範囲内では、どうもこれはあまり私には合わないぞ、と思うだけだ。

 詳しく思うところは別項にて書くつもりだが、韓国に住むのなら在日よりもむしろ日本人のほうが住みやすいのではないか。そして同じ日本人でも、女ならより若い女の方が住みやすいのではないか、と思っている。というか、「よくわかんないけど、そうじゃないかな〜って気がするだけ」という感じだ。

 それがなぜか、というところが、この本を読むとある程度書いてある。内容は最近増えてきた「新しい世代の日本人による親しみを込めた韓国批判本」というところなのだが、私にとってはまさにかゆいところに手が届くという感じだった。

 自分が在日であることと、韓国と日本の関係があまりにも濃いことで、つい日韓関係のことばかりに目がいっていたが、この本を読むと日本人以外の外国人に対する韓国の態度がわかって面白い。韓国在住の欧米人や中国人、そして在日に近い存在である中国の朝鮮族なんて人たちが、当然だが韓国にはいっぱいいたのである。

 韓国人は在日に対して冷たい。だが韓国にいる中国朝鮮族の人たちは最もひどい目にあっていると著者は言う。だがどうだろう、朝鮮族の人たちは中国で曲がりなりにも少数民族の中国人として受け入れられている。そこから自分の選択で韓国へ行くこともできれば、この本に出てくる著者の友人のようにカナダやオーストラリアに行くこともできるだろう(中国本土ではまだまだ難しいだろうが、少なくとも中国籍はあるだろう)。在日には日本国籍はない。カナダやオーストラリアに行ったとしても、パスポートは韓国のままだ。一度も住んだことのない韓国の。こんな変な話あるだろうか。

 四方田犬彦氏が自著でほんの少し触れていただけの、韓国人の在日に対する悪感情についても、こちらの本ではしっかり書かれている。「在日韓国人よりも日本人の方が韓国で暮らしやすい?」のように「そうじゃ、そうじゃ」と膝を打つものもあれば、私としては在日の記述としてどうかなあと思う部分もある。しかし「これは学術書ではなく、いろんな国の友達の言っていたことなどを書きまとめたもの」と書かれているのだから、別にこれでいいのである。いろんな考え方があって当然だしな。

 例えば、「韓国で暮らす在日の友人たちには柳美里の評判はあまりよろしくない」というところは「そうじゃ、そうじゃ」と思うのだが、その理由が私とは全然違うのである。「韓国マスコミが柳美里を好むのは(略)デビュー当時から彼女の作品の重要な素材であった『いじめ』『家庭崩壊』『自殺未遂』などは、韓国人がイメージする『在日』の姿そのものであり、彼女は韓国人にとってじつに安心できるヒロインなのである」そこで在日の友人は「在日はあんなに暗くない!」と言って怒るらしいのだ。

 私個人は在日はけっこう暗いと思うが、それは置いといて、韓国で在日のイメージがそんなんだとは知らなかった。韓国人は在日が日本で差別を生きていたことさえ知らないのかと思ってた。ただ「あいつらは金持ち」と思っているだけかと思ってた。だって何の思いやりもないんだもん。著者も上のように書きつつ、「韓国人は在日を知らない」とも書いている。

 韓国には「永住権」がないということも、恥ずかしながら知らなかった。それゆえ韓国ではあの華僑でさえも根付かず、みんな国へ帰ってしまったということだ。スゴイ。

 なんだかなんだ言っても、私は韓国人の反日感情はリーズナブルな部分があると思っているし、日本は非難されて然るべきだとも思っている。だから次のような記述には「ほらきた」と本当に腹立たしく思ってしまう。著者のインド人の友人がこう発言したそうだ。「韓国人はもう日本に対する感情的な反発はやめた方がいいと思う。もう日本の植民地ではないのだし、僕たちはイギリス人に対してそんな敵対意識は持っていないよ」

 これを聞いた韓国人が言葉を詰まらせてしまったため、著者は助け船を出したという。「隣の国は仲が悪いに決まっているの。ベトナムとカンボジアもそうだし、ネパール人もインド人が大嫌いよ」。「大嫌いよ」って何で女言葉なのか知らんが、そうじゃないだろう。それでインド人は納得したとしたり顔のようだが、そりゃおかしい。

 以前にも書いたが、これは私がブルガリア人とした会話と寸分違わない。「韓国人が日本を悪く言うのはおかしい。終わったことについてとやかく言うのはやめて前向きになるべきだ。ブルガリア人はソ連に対して悪感情は持っていない」とブルガリア人は言い、そして私も言葉に詰まった。なぜ詰まったかというと、英語で話していたからだ。日本語だったらいろいろまくし立ててやったのにー!と今でも悔しく思っている。

 とにかく日本の韓国統治政策は間違っていたのだ。とにかくやり方がまずかった。その上事後処理も悪い。未だに政治家が差別発言をする。欧米の帝国主義列強は植民地統治に慣れていたせいか、欧米式思考のせいかわからないが、確かに憎まれないようにやっている。その方法に目を向けずに、反日感情を「韓国人の執念深さ」のせいにするのは最低だし、そのインド人もブルガリア人も「もうちょっと勉強してからものを言え」と叱りつけたくなる。

 数ヶ月前ラジオの韓国レポートで、日本人レポーターがこんな話をしていた。韓国にサラリーマン向けの有名なホームページがあって、そこでこんなアンケートをしていた。質問は「あなたは外国に移住したいですか?」大多数が「はい」と答えたという。そしてレポーターはこう続けた。「私の周りでも、一度同じ質問をしてみたのですが、全員が外国に移住したいと言っていました。日本人である私だけが韓国に住み続けたいと言ったんですよ、ハハハ」なーんだ、韓国人も韓国社会に窮屈な思いしてたんじゃないかー。

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