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花猫がゆく

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「やぶさか対談」東海林さだお・椎名誠(講談社)

◆大江って面白い人だったんだ

 大江健三郎がゲストの回を読んで、ちょっとびっくりした。この人がこんなにユーモアのある人だとは知らなかった。私は大江の小説って大嫌いで(「ごく初期のは面白いよ〜」と人は言うけど)、本人も外国かぶれでイヤだったけど、不覚にも見直してしまった。おもろいだけでなくて、自分自身のことも、かなり冷静に分析できる人だったんだ。

 「やぶさかの漢字は、藪に坂でいいんですか」と聞かれて、「冗談じゃなしに、そう思っていましたか」と答えるセンス(吝嗇の吝なんだよね〜。知らんかった)。

 ノーベル賞をもらって何が変わりましたか、と聞かれて「ホテルが好都合です」。なぜかというと、「以前は、店の人たちは僕のことを『お金がないから、ベーコンを取らないんだろう』と思うかもしれない、と」思ったが、今では「『ベーコンは、うちでいつも食べてるから食べない』と思うだろうと、パンとコーヒーを注文します、堂々と」。すごいね〜。ほんとにコンプレックスの固まりなんだ、この人。

 高額所得者名簿にもこだわってるらしい。「僕は二回、入ったことがあるから。(略)いかりや長介と同額だった。それ以来、いかりや長介が出てると、何となく親近感があるなあ」「いかりや長介が、最近は演技派になって、消化剤のコマーシャルに出てるでしょ。家内は『あの人は滑稽だったときが一番よかった』って言うんです。僕は、「いや、人間にはその時の立場もあるんだ』と言う」面白い面白い。

 白眉はこれかも。「僕はよく人と絶交する人間ですけど、ある日、どうしてもこの人間と絶好しないではいられない、と考えるわけです。二日過ぎれば、またその人にニコニコできるのは分かってるんです。しかしこの一日の間にこれを確実なものにしたいと思って、相手を批判する手紙を書く。
 その手紙を持って、僕の家からポストまでの二百メートルを歩くとき、『あ、この二百メートルのために、俺は何回失敗したか』と思いながら行くんですよ。そして、英雄のような気持ちでポストに手紙を入れて、後悔して帰ってくるんです。その一日が我慢できない、ともかくそれで生きてるという感じがする」

 面白いなあ。あと、高校の同級生だったという伊丹十三への羨望も面白い。美貌の男が好きなんだって。小説にも、ちょっとホモっぽい感覚、あるもんね。伊丹十三の妹と結婚してるって、ちょうどモッくんが内田裕也の娘と結婚したのを彷彿させるような…。

 ルックスのコンプレックスもすごいらしく、自分と同じく「耳がでかくて前に出てる」人をチェックしまくっているらしい。「五木寛之さんも少し出てられるけれど、五木さんは耳が出てる醜さと美しさの限界で、美しさのほうに立ってるわけです(笑)。もしかしたら、僕にその違いを知らせたかったんですね。初めて会ったとき、『大江さんね、あなたの耳は英語で何でいうか知ってますか』って言われた。『デビルズ・イヤーって言いますな』と教えてもらいました。悪魔の耳だって」

 スルドいな、と思うのは例えば、東海林さだおマンガのキャラは庶民の中にいるけど、手塚治虫のキャラは観念的だ、と言うとことか。「手塚治虫は天才だけど、実際にはあまり観察しなかった人じゃないかと思います。彼の登場人物には作品的な原形があるんです。たとえば映画から取ってきたりね」

 椎名誠が大江の初期の短編をずいぶん読んだ、と言えば、「あれは若い人が真似しやすい感じで」と言ったりする。そうそう、いたよ大江の初期作品が好き、と言ってそういうスタイルの(中身はからっぽの)小説書いてた男。よくわかってるなあ。椎名さんも真似してたとは驚きだけど。

 まだ私がものすご〜く若い頃、大江健三郎が「日曜美術館」に出ていたことがあった。特集はもちろんウィリアム・ブレイク。その時言っていたことが(昔なので内容は忘れたけど)ものすごく観念的だけど洞察に富んでいて、しかも独特で面白くて、それですごく印象深かったのを覚えてる。この人すごいかしこいなあ、と若い私は思ったのだ。その後小説を読んでげーっとなるんだけど。しかしあの時感じたことは、やっぱり正しかったんだ。この人もしかして、小説より本人の方が面白いんとちゃう?

 男が好きだって話も面白いよ。若い頃の武満徹は妖精のようだった(わかるなあ)、とか、
「出島って相撲取りがいるでしょ、体中、肌が真っ白な。あの出島は、正視できますか」とか。とにかく抱腹絶倒した。

 (大江健三郎だけでなくて、他にもいっぱいゲストいるんだけどね)。

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