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「大正時代の人生相談」(マガジンハウス)◆想像するのは自由 いや、本屋で立ち読みしただけなんだけどね。なかなか面白かった。大正時代の読売新聞掲載の人生相談を掲載した本。 小谷野敦のあとがきも面白かった。何でも、読売新聞では現在でも人生相談を載せ続けているらしいが、朝日新聞にはないらしい。その現在の人生相談で、ある時こんな相談があったそうだ。「主婦です。最近、自分の息子(中2)のクラブの先輩(中3)が気になってしかたがありません。どうしたらいいでしょうか」なんか、わかるなあ。回答者の里中満智子は「想像するだけなら迷惑かけないし自由ですね」と書いていたそうだ。さすが。 そのほかに「社交術を学ぶためにホステスになりたいのですが」というバカ女に、回答者の落合恵子は「ホステスとはそういう仕事ではありません」と叱りつけていたらしい。 「恋愛に年の差は関係ない」「職業に貴賤はない」というタテマエの朝日新聞には、だから人生相談などできないのだ、と小谷野さんは書いている。たしか中島らもの人生相談は朝日だったと思うけど。考えてみればあれは、批評的な人生相談だったわけね。 なんかあとがきのことばっかり書いてるけど、小谷野さんによると、「大正時代は現代のモラルがほぼ出来上がった時代」だそうだ。その代表が自由恋愛で、人生相談の回答者も「真実の愛があればできるはずです」とかしょっちゅう書いている。ちなみにこの時代の回答者は全員、読売新聞の記者だったらしい。 しかしどっちかというと、いやあ大正時代って結婚前には絶対処女でないといけなかったんだなあ、もし非処女だったら、一生「夫に悪い」と罪悪感を持ち続け、夫が浮気しても、「私が処女じゃなかったから」と自分を責めねばならず、夫が妾を持っても納得しなければいけなかったのかなあ、などと私は強く感じたけどなあ。これを読んだら。 例えば、「前の恋人は処女でないことがわかって別れた。そのあと処女と思って結婚した妻は、隠していたが処女ではなかった。結婚後15年経ってそのことを妻が告白したが、大ショックである。自分は一生処女を知らないままなのか。耐えられない。処女の妾を作りたい」とか。ちなみに回答は「本当の愛があれば大丈夫です」というようなものだったと思う。とにかくみんな、男も女もすごいこだわりよう。 その中で出色だったのがこんな相談。「処女でないのは承知の上で妻と結婚した。私は童貞だった。しかし一緒になってみると、意外にも妻は鈍物であった。思えば自分の結婚の動機には不純なものがあった。離婚したい」助平な気持ちで結婚したのに期待が裏切られた、こんなはずじゃなかった、ということらしい。この相談に回答者は「あなたが悪い」ときっぱり断罪している(たしかに回答者たちはみんなすごい「大人」で、「個人の自由」なんて言葉は一言もない)。しかし「鈍物」って、すごい言葉。まさか「名器」の反対ってことか? |