花猫がゆく

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最近の北朝鮮報道について(1)

 すっごいねえ、最近の北朝鮮報道。拉致報道以来、北朝鮮がらみのニュースがない日はない。一体なにが起こったんだ、て感じ。今日はNHKで帰国事業の特集をやっていた。ええ?帰国事業!そんな話が天下のNHKで取り上げられるなんて。アナウンサーの口から「今日は帰国事業についての特集です」と聞いたときには鳥肌が立った。時代が変わったんだ(ていうか、日本は簡単に時代が変わっちゃうんだけど)。

 それを見ていた母の言葉があまりにも面白かったので記す。
 「あいつらはなあ(筆者注・総連のこと)嘘ばっかりつきよったんや。北朝鮮行ったら、毎日白い米が食べられて、酒が飲めて、毎日お花に水だけやってたらいい、そうゆうとおったんや。なにがお花に水じゃ! 一体、お花畑なんかどこにある、ゆうんじゃ!」

 当事者の話はリアリティあるでしょ。お花畑(笑)。

 その後、イラク査察のニュース。
母:「あれはどこや」
私:「イラク」
母:「共産党は悪いことばっかりしよる」
私:「イラクは共産党と違うで」 
母:「嘘つけ。戦争しようとするのは共産党ばっかりやないか(筆者注・もしかして、キューバ危機とか思い出してたのかも?)」
私:「(そんなアホなと思いつつ)いや、今、世界で一番戦争したがってるのはアメリカやで」
  (このあたりでテレビではブッシュが映る)
母:「嘘つけ。アメリカはいっつも助けてばっかりやないか」
私:「そんなことない」
母:「見てみい。どこの国もアメリカに助けて〜、助けて〜、ゆうとるやないか。アメリカはいつも他の国を助けとる」
私:「……そんなことはない」
母:「そんなことないわい(自信たっぷり)。日本かて、どっかが戦争してきたら、アメリカに助けてくれ〜、ゆわなあかんやろが」
私「……」

 その通りだ。返す言葉はない。
 朝鮮戦争を体験した世代にとって、北朝鮮は「戦争を仕掛けてきた国」であり、アメリカは、実感として「あの時助けてくれた国」なのだ。実際に自分の家族がそれで死んだり助かったりしておれば、まあ国の利害なんかは知ったことではない。しかも母はずっと日本にいたわけだから、在韓米軍が近くにいるわけでもないし、反米感情も持たずにすむわけだ。母にとっては韓国はアメリカに助けてもらった、イランもイラクも日本もみ〜んな、アメリカに助けてもらってるってことになるらしい。うーん。困った。

 うちの両親は慶州の人である。父も母も昔っから北が大嫌いで、ソーレンのことも毛虫みたいに嫌ってた。従って日本共産党も、ついでにソ連も大嫌いで、ニュースを見ては悪口ばっかり言ってた。私はまあ、韓国籍を持つ在日にとってこれは普通の感情なのかなあ、などと考えていたのだが、やはり朝鮮は引き裂かれた国。在日もいろいろなのだ。

 例えば日本一在日が多いであろうと思われる大阪市生野区では、過半数の人たちが済州島出身という話である。済州島は当然ながら島であって、本土とは海を隔てている。私の親が知っているような戦時の惨状は、たぶん身を持っては知らないのではないか。その代わり、独立運動が盛んで、そのために多くの人が死んでる。うちの親などとは逆なのだ。

 よく調べたわけではないので断言はできないのだが、知人の中には(親が)済州島出身で総連シンパ、という人が何人かいる。済州島出身で民団シンパ(そんなものあるのかどうか知らないが)はあんまりいない(ここで言う「シンパ」とは、心がどっち寄りかという意味で、例えば北朝鮮のほうが好きだが便宜上韓国籍にした、という人もいるわけです。朝鮮籍の不便さは周知の通り)。済州島という、韓国でも南の端っこの出身なのに、国籍は朝鮮籍という変な話になってしまう。しかも帰属するべき北朝鮮には行ったこともないという。故郷は南なのに、自分の国は行ったこともない北。全くもって奇妙な話だ。在日は、奇妙な存在なのだ。

 付け加えておくと、野中広務のことも「あの人は悪いことはせん」って言っていたのだよ、うちの母は。嗚呼。

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