花猫がゆく

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軍隊は厳しいか?

ソングッの証言

 大おば様のひとつぶだねの孫(つまりオンニの息子)は大学生で、週末だけ実家に帰ってくる。その妹は実家に住みながら大学に通っているが、毎日帰ってくるのは夜遅く。週末はオンニと大おば様(つまり彼の母とおばあさん)と一緒に水入らずという感じだが、そこに妹の姿はない。まあ、私が滞在している間、特に彼女が忙しかっただけなのかも知れないが。

 その息子に軍隊について聞いてみた。彼はもう軍隊は済ませてきたと言う(以下大おば様と母の通訳つき)。軍隊は厳しいと聞いていた私は、そりゃー大変だったでしょーねー、どうだった?という感じで振ってみた。すると彼は「いや、別に」という感じで、しれっとしているのである。そんなー、軍隊が厳しくないわけないじゃん、と思いこんでいる私は、「え、しんどくないの?何で?」と突っ込んでみた。

 彼が言うには、こうである。徴兵期間中の配置(どこで何の仕事をさせられるか)は入ったときの抽選で決まる。軍隊の仕事はしんどいものばかりではなく、楽なものもある。自分は楽なものに当たった。「何の仕事?」と聞くと、軍隊内の購買部のようなところらしい。要するに、コンビニの店員みたいなものだ、と言うのである。

 それで何となく合点がいった。韓国の男は良くも悪くも男らしくて、よく言えば若いのに頼りがいがある(感じがする)。これは軍隊で精神的にも肉体的にもキビシー訓練をしていた賜物だと思うわけだが、彼ソングッにはその種の「キリッとした男らしさ」が感じられないのだった。たいへん人柄のいい男子なのだが、ちょっとぼんやりした感じで、それが何となく他の韓国男子と違うなあと思っていたのだった。それはもしかして、軍隊で楽してたせい?

 するとやはり、「韓国の男が男らしいのは、軍隊のおかげ」という説が強められてしまう。ほんとかなー。

 日本で会った韓国人の男性たちは、軍隊、キビシーよ、つらいよ、と言っていた。ひとりは軍隊の中でも最も厳しい(と彼が言っていた)といわれる海兵隊にいたという。そこでは訓練も厳しいが人間関係も相当厳しかったらしい。どんな風に?と聞くと、普段おしゃべりな彼があまり語りたがらなく、口数少なくなってしまうのだ。ちなみに彼の「男らしさ」度は、相当ハイレベル。

 他のひとりは北朝鮮との国境近辺の警備をしていたという。そこに配備された人たちは実弾入りの銃を持たされ、精神的にもたいへんに厳しいので、もらった銃で自殺する人がたくさんいたと言うのだ(南北和睦が深まった今は事情も変わったかも知れないが)。

 そういう人たちは、軍隊に行く前とあとでは性格まで変わってしまうと言う。そう、それこそが私の思っていた軍隊の姿。なのに、コンビニの店員だって?軍隊ってそんなにばらつきがあるのか?

 もうひとつ言うならば、ソングッの父親(つまりオンニの夫)は早世してしまったため、彼は長いこと母子家庭で育っている。心理学者風に言えば「父のモデルがない」わけで、彼がマッチョではないのは、そのせいもあるのかも知れない。

 なーんてこと言ってみるが、韓国の男にだって個人差はあるわけで、決めつける気はもちろんない。日本人でも、「最近の若い男はへなちょこだ。徴兵をすれば男らしくなるから、すればいい」なんて本気で言う人がいるけど、じゃあ、あんた行けよ!と思う。年とって関係なくなってから言うな。

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