花猫がゆくblog韓国覚え書き韓国エッセイ読書メモ過去の日記 |
薄荷砂糖(ペパーミントキャンディ)◆私にはわからない 韓国映画がわからない。今まで見た韓国映画は「女がつらい韓国映画」でも書いたように、パターン化してて面白くないものばかりだった。この映画はたまたま韓国通のS井さんちにビデオがあったので見たんだけど、いや正確にはしばしば早送りしながらだったのでちゃんとは見てない。だって暗いだけで面白くないんだもん。 しかし私には韓国映画を語る資格なんかないのだ。「シュリ」も「JSA」も見てないし、たぶん話題になってるってことはけっこう面白いのだろうが、やっぱりあまり見ようという気にならないのだな。 「薄荷砂糖」、評価が高いらしいので一応期待して見た。なんだこれ、今までのパターンとなんも変わらんやん。ていうか、そっくりの映画があったぞ。「グリーンフィッシュ」だ。全体のムードといい、悲劇的なストーリーといい、タイトルのブツ(キャンディとか緑の魚とか)の使い方といい、そっくり。田舎の純朴な青年が暴力に染まり、あげくに死ぬっていう同じ話やん。と思ったら、同じ監督の映画だった。なんだやっぱり。 やっぱり韓国映画面白くないじゃん、と言うと、一緒に見ていたS井さんは主張する。私もこれは面白くない、でも韓国映画には面白いのがいっぱいある、これが韓国映画だと思ってはいけない。S井さんは先だって釜山で行われた映画祭で韓国映画をいっぱい見てきたし、彼女がそう言うのだから、たぶんそうなんだろう。ちなみにS井さんは「JSA」は絶賛している。 しかし「薄荷砂糖」が韓国で賞を取り、評価が高いのは確からしい。多分これは「芸術映画」なのだろう。娯楽を求めるものではなく。しかしその感覚もまた、私にはわからない。 「ソウルの風景」という本の中で映画評論家でもある四方田犬彦が「JSA」と「薄荷砂糖」の解説をしている。「薄荷砂糖」についてはこう書かれている。「ここにはおよそ韓国人であるならば思い出したくない記憶、できることなら封印したままにしておきたい過去というべきものが、凝集した形で語られている。(略)『薄荷砂糖』はこの急激な変化の中で自分を喪失し、落伍していった人間の姿を、ある典型として提示している。我々は程度の差こそあれ、みなヨンホのように生きてきたのではないだろうか。(略)監督はそう問いかけたいかのようである」 そうなんですか。そう言われてもやっぱりいまいちわからない。だって実際の韓国人は極めて明るいのだもの。明るいからこそ芸術として暗いものを求めるのだろうか。もしかして芸術とは暗くて重いものというコンセンサスが韓国ではあるのだろうか。うーん。 また「JSA」についてはこう書かれている。「(監督は)90年代以降の完成された大衆消費社会において志を達成させるためには、作品を完璧なるエンターテイメントに仕立て上げなければいけないという確信を抱いていた。出来上がったフィルムはアクションあり、サスペンスあり、ユーモアありで、ともかく息を呑む面白さをもっている」「『JSA』ではもはやすべてが許されているように思われた。ここには伝統的な反共宣伝もなければ、その裏返しとしての北への賛美もなかった。登場人物たちは国籍をひとたび措いて、まず同じように不自由な空間に置かれた対等の人間として描かれていた」 しかし暗い暗い「薄荷砂糖」も大衆消費社会で志を達成してるようだしなあ。そして「JSA」についてはこうも書かれているのだ。「このソフィーの設定(女主人公で、原作では男だった)はもうひとつ、ホモソーシャルな文脈においてイデオロギー的な意味を持っている。すなわち女性とは外国人と置換可能であって、兵士たちの男の物語からは必然的に排除されるべき存在であるとする立場である。ここには伝統的に韓国社会を支えてきたマッチョイズムの最も新しいあり方が実現されているのではないだろうか。そのように考えてみたとき、『JSA』というフィルムが抱いている限界が、おのずから浮かび上がってくる」 やはり男尊女卑は生き続けているということか。私が韓国映画を見たくない最大の理由はこれなんだよね。いくら一見面白くても、この感覚はチクチクと刺さってくるし、今まで見た韓国映画(少しだけどさ)すべてにこの感覚は伴った。たぶんどれを見てもあるだろうと思う。それを感じるのがいやなのだ。 けなしてばかりいる「薄荷砂糖」にもひとつだけ面白いところがあった。主人公の妻がキリスト教徒で、はじめてのセックスの前にいきなりお祈りを始めるところだ。ベッドの上で主人公はうんざりしている。あと、引っ越しのあと、手伝ってくれた男たちがいっぱいいる中でやはりお祈りをはじめる場面もあった。男たちはやはりうんざりしている。これはリアリティがあったなあ。うちの親戚はみなキリスト教徒なので、これはよくわかる。この描写はうまいと思うし、唯一笑ってしまったところだ。ユーモアあるじゃん。 |
HOME > 読書メモ > 薄荷砂糖(ペパーミントキャンディ)